コラム
変形性膝関節症について
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、膝関節の軟骨が徐々にすり減り、関節に痛みや腫れが生じる病気です。年齢と共に発症しやすくなることから、「膝の老化現象」とも呼ばれることがあります。日本ではご高齢者を中心に多くの方がこの病気に悩まされています。主な原因として加齢や体重増加、過去のケガなどが挙げられます。
症状
変形性膝関節症の主な症状には、以下のものがあります。
・膝の痛み
最も典型的な症状で、特に歩行時や立ち上がるときに痛みが生じやすいです。
・腫れやこわばり
炎症によって膝が腫れたり、朝起きたときにこわばりを感じることがあります。
・動きにくさ
膝の動きが制限され、階段の上り下りやしゃがむ動作が難しくなることがあります。
・変形
進行すると、膝の関節が外見上も変形し、O 脚や X 脚のような姿勢になることがあります。
変形性膝関節症の初期では立ち上がりや歩きはじめに痛みを感じ、中期では正座や階段の昇降が難しくなります。末期には変形が強くなり、膝がまっすくにピンと伸びなくなり、歩行も困難になります。
原因とリスク要因
変形性膝関節症の原因は複数あり、いくつかのリスク要因が重なることで発症することが多いです。
・加齢
年齢を重ねるにつれて関節の軟骨が弾力を失って変化していき、すり減りやすくなっていきます。
・肥満
体重が増えると膝にかかる負担が増加し、関節に大きなダメージを与えやすくなってしまいます。歩くときは“体重の 2~3 倍”、階段を上り下りする時には“体重の 5~7 倍”、ジャンプや激しい運動をするとそれ以上の負担が膝にかかっています。
・ケガ
過去に膝を負傷した経験がある場合、関節を構成する周囲組織のバランスが崩れてしまいやすいです。
その後の関節の変形が進行しやすくなります。
・運動不足
膝周りの筋肉が弱くなると、上手く関節を支えられなくなり、関節への負担が増大します。
・遺伝的要因
家族にも変形性膝関節症を抱える方がいる場合、遺伝的要素が関与していることもあります。
治療方法
変形性膝関節症の治療内容は、患者さんのライフスタイルや症状の程度に応じて異なります。治療は大きく分けて保存療法と手術療法があります。
保存療法
・薬物療法
痛みや炎症を和らげるために、内服薬(消炎鎮痛薬:NSAIDs)、外用薬(軟膏や湿布薬)、関節内注射(ヒアルロン酸)などが処方されることがあります。
・PFC-FD 療法
保存療法の中に再生医療も選択肢に加えることができます。この治療法は、患者さん自身の血液から抽出した多血小板血漿(PFC)を凍結乾燥し、それを患部に注入することで、組織の修復を促進します。
PFC には、膝関節の再生を促す成長因子が含まれており、痛みの軽減や膝の機能回復が期待できます。
・リハビリ
膝周りの筋肉を強化し、膝にかかる負担を軽減するための運動療法が推奨されています。また、動かしにくくなった関節を動きやすくしたり、必要な方には装具療法や物理療法を行います。
・生活習慣の改善
体重管理や適度な運動、膝に優しい靴を選ぶことも大切です。足元の踏ん張り方で膝への負担が変わることがある為、偏った姿勢やワンパターンの同一姿勢ばかり取らないことが大切になります。
・装具の使用
膝関節の支えを補助するために、膝サポーターや装具を使用することも効果的です。
手術療法
症状が進行し、保存療法では効果が見られない場合、手術が選択肢に挙がります。
・関節鏡視下手術
膝関節の内部を小さなカメラで確認しながら、損傷した組織を取り除く手術です。
・人工関節置換術
重度の変形や痛みがある場合、損傷した関節部分を人工関節に置き換える手術が行われます。
予防方法
変形性膝関節症は、いくつかの生活習慣の改善で予防を図ることができます。
・適度な運動
関節の柔軟性と筋力を維持するために、ウォーキングや水泳などの衝撃が少ない運動が推奨されます。
・体重管理
適切な体重を維持することで、膝にかかる負担を減らすことができます。BMI(肥満度)を 25 以下に抑えると良いでしょう。BMI の計算式は『BMI(肥満度)=体重(kg)÷伸張(m)2』です。
・正しい姿勢
日常生活で膝に過度な負担をかけないよう、姿勢や動作に気をつけることが重要です。特に正座や膝を曲げて屈みながら捻るような動きは避けることが望ましいです。正座は膝関節の正常な可動域を超えて動かされてしまっており、正座で座り込むと膝関節が亜脱臼している状態になっています。また、膝関節は曲げ伸ばしには強い構造になっていますが、捻じる動きには強くありません。
おわりに
変形性膝関節症は進行性の疾患ですが、早期に適切な治療を行うことで、痛みの軽減や生活の質(QOL)の向上が可能です。治療法は、保存療法から手術療法まで多岐にわたり、患者さん毎の症状や生活背景に応じて最適な治療法を選ぶことが大切です。当院では、薬物療法やリハビリテーションに加え、最新の PFC-FD 療法も提供し、患者さんの健康や生活をサポートします。膝の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。